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「選ばれる会社」へ。ダイハツ九州が変える、働き方とものづくりの未来。

ダイハツ九州株式会社
取締役 宮田 雅章

更新日:2026年8月05日

東京都出身。中央大学法学部卒業後、1986年ダイハツ工業株式会社に入社。長年にわたり人事部門を歴任し、採用・組織開発・DX推進など幅広い領域で実績を積む。2014年人事部長、2016年東京支社長、2023年DX推進部長。2026年1月ダイハツ九州株式会社の取締役に着任、現在に至る。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

この記事でわかること

  • 混流生産と高効率工場で、軽自動車の約75%を担うダイハツ九州
  • 「選ばれる会社」へ、人への投資で総合生産性を高める
  • 若手タスクフォースが動かす、心理的安全性と制度改革
  • 既存ラインに商用EVを組み込む「ものづくりDNA」
  • 求めるのは自分の意見を持ち、チームで動ける人

ダイハツ軽自動車の75%を生産するグループの中核拠点。

1960年、ダイハツ工業の100%出資子会社として、群馬県前橋市に設立された「株式会社ダイハツ前橋製作所」が当社の前身です。商用車を主とする軽自動車の生産を担い、1977年には「ダイハツ車体株式会社」へと社名変更。

2004年に本社機能と本社工場を大分県中津市へ移転し、2006年に「ダイハツ九州株式会社」へ商号変更しました。2008年からエンジン工場を福岡県久留米市に構え、開発・調達・生産機能を一貫して担っています。

また、2019年に九州部品センターが大分(中津)工場内に併設され、当社による運営がスタート。九州の各サービス拠点へサービスパーツをタイムリーに供給できるようになりました。

現在、ダイハツ九州はダイハツブランドの軽自動車の約75%を生産するグループの中核拠点へと成長しました。大分県中津市の第1・第2工場で年間約44万台の車両を組み立て、福岡県久留米市の工場ではエンジンを製造しています。

中津・久留米を合わせて約5,000名が働く、地域を代表する雇用の柱でもあります。生産体制の最大の特徴は、世界でも珍しい「混流生産」です。第1工場では軽トラックから乗用車、特装車、そして今年2月に生産開始した商用EVまで、あらゆる車種を一つのラインで作り上げています。

第2工場はミライースのような軽自動車に特化し、世界最高水準のコスト効率を誇ります。この全く性格の異なる2工場が並び立つことが、ダイハツ九州の強みであり、他にはない面白さです。

「人への投資」を強化し、総合生産性を高める。

これからの10年・20年でダイハツ九州が生き残るための条件は、「選ばれる会社」になることだと思っています。これには三つの意味が込められています。「ここで働きたい」と人が集まる会社、地域から愛される会社、そしてお客様から信頼される会社。この三つがそろって初めて、本当の意味での競争力になると考えています。

かつてのダイハツ九州は、「この会社に入れた」こと自体が勲章でした。会社そのもののブランド力だけで人が集まった時代です。しかし、これからは中身で選ばれなければなりません。「ものづくりに特化しすぎた会社を、人を中心に据えた会社に変えること」これが私のミッションです。

ダイハツ九州はものづくりにおいては本当に強い会社です。コスト競争力は高く、「ミライース」のような軽自動車を世界一安く作れる工場もあります。ただ、長年の「上意下達」の文化が根付いてしまって、若い人たちがついてこられなくなってきた。

「言いたいことが言えない」「意見が上に届かない」、そういった空気が染みついていたのです。中途採用で苦労したり、せっかく採用した人が辞めていくという現実も真摯に受け止めなければなりません。

一方で、新たにトライしているのが「総合生産性」という考え方です。人への投資を積極的に行い、働きやすい環境を整えながら社員の定着率を高めていく。

一見負担が大きいように見えますが、大量採用・大量離職を繰り返すよりも、トータルで見ればはるかに効率的です。採用・教育コストの削減だけでなく、品質・安全面の向上にもつながります。だから「投資」なんです。働く人が楽しんで、長く勤めてもらえる会社、それが我々の目指す姿です。

組織改編、福利厚生の刷新など矢継ぎ早に改革を実施。

2026年1月に着任して最も力を入れているのが「心理的安全性」のある職場づくりです。「言ってもいいんだ」という環境を少しずつ整えながら、縦割りの組織に横のつながりを作り、部門を超えた連携ができるワンチームを目指しています。

1月には各部署の若手キーパーソンによる「タスクフォース」を立ち上げ、「会社をどう変えるか」を現場の声として吸い上げています。参加メンバーからは、人事制度・福利厚生・評価の問題など、「ここはおかしいよね」という意見が次々と出てきました。これまで言えなかっただけで、みんな意見を持ってるんですよね。

そこで出てきた意見を基に、一つ一つ改革を実行しています。例えば、福利厚生におけるカフェテリアプランを従来比4倍の年間6万円に拡充、現場の手当も何十年ぶりかで改定しました。

入社式をパーティー形式に変更、秋の社内イベントは地域にも開放するなど、小さなことからですが、「会社が変わっている」と社員が肌で感じられる変化を一つ一つ積み重ねていく。それが「言ってもいいんだ」という空気をつくり、さらに声が上がりやすくなる好循環につながっていくと信じています。

部長同士の「わいがや(職位や年齢を超えた自由な議論)」も定期的に開催しています。最初は下を向いて黙っていたメンバーも、最近は顔を上げてうなずくようになってきました(笑)。「選ばれる会社」への道のりはまだ途上ですが、確実に変わり始めています。

7月には組織改編も実施し、中津・久留米の情報連携強化や本社と工場の一体化も進めていきます。会社が変わっていることを、社員一人ひとりに実感してもらうことが、変革の第一歩だと考えています。

グループ初の商用EV生産開始。

もう一つの大きなテーマが電動化への対応です。2026年2月、ダイハツグループとして初めての商用EV「e-ハイゼットカーゴ」「e-アトレー」を中津工場で生産開始しました。EVのバッテリーは約350キロあり、通常の組み立てラインでは対応できません。

そこで、通常の工程ではバッテリーをつけずに流し続け、最後の工程でラインから抜き出して下から取り付けるという方法を現場のエンジニアたちが考え出しました。専用ラインを引かずに、既存のラインの中に組み込んでしまうというアイデアです。これがダイハツ九州の「ものづくりDNA」そのものです。

第1工場では、軽トラックから乗用車、特装車、そしてEVまで、部品点数や構造が大きく異なる車種を一つのラインで生産しています。こうした多様な車種を効率よく作り分ける技術と現場の知恵こそ、ダイハツ九州ならではの強みです。

また、工場の屋根の約90%に太陽光パネルが設置され、使用エネルギーの約12%を自社の太陽光発電で賄っており、自動車メーカーの中でも大規模となっています。EVを生産していることで、余剰電力を蓄電し再活用する仕組みも検討中です。

求めているのは変化を恐れず、自分の意見を持ち、チームで動ける人材。

ダイハツ九州で長く活躍してきた社員には、強烈な「職人気質」を持つエンジニアが多い印象です。ものづくりへのこだわりは本物で、先日の工場改造でも、パズルのようにラインを組み替え、地下を掘り、スペースを捻出して新しい工程を作り上げていく。その発想力と実行力は本当にすごいと思います。

ただ、これからの時代に必要なのは、その「ものづくりの力」に加えて、「伝える力」や「横につながる力」です。「背中を見て学べ」ではなく「ちゃんと教える」文化への転換が必要だと感じています。

採用においては、「様々な車種に関われる」「自分のアイデアが形になる」という点を積極的に発信しています。県外から来た社員が「中津に住んでよかった」と言ってくれる。そういった職場と地域の魅力も、大切なリクルーティングのメッセージです。

今後も一定数の採用は続きます。求めているのは、変化を恐れず、自分の意見を持ち、チームで動ける人材です。「言いたいことが言える会社」に変わりつつある今、そういう人こそダイハツ九州で活躍できると思っています。

中途採用の方も大歓迎です。転勤なく、この地で腰を据えてものづくりに向き合いたいという方にとって、ダイハツ九州は理想的な環境だと自負しています。

中津という地で豊かに生きるという選択。

私自身、大阪から単身で中津に来て、初めてこの土地の良さを実感しました。海が近く、山側には耶馬渓がある。温泉も豊富で、別府にも福岡にも日田にもアクセスがいい。水が美味しいから米も焼酎も旨い。大阪にいた頃には経験しなかった豊かな自然に触れ合う休日の過ごし方が、ここにはあります。

この地域の良さは、若い社員にも伝わっているようです。大学卒業後に就職でこちらに来て、「なかなかここを離れられない」という社員も多い。「ダイハツ車を作りたい」という方が、ダイハツ工業ではなくダイハツ九州を選ぶケースも増えており、転勤を望まない時代の流れとも合っています。

会社としても地域との関係をより深めていきたいと考えています。工場の敷地内には湧き水が出ており、絶滅危惧種の鳥や植物が生息するビオトープも整備予定です。車を作りながら自然と共生する、そんな工場は世界を見渡しても珍しいでしょう。

工場内のビオトープを小学生の工場見学と組み合わせた自然体験の場にすることも構想中です。商用EV生産開始を期にマスコミの取材も増えており、ダイハツ九州の「今」を広く発信する機会となっています。中津という町で世界水準のものづくりをしながら自然と共生し、地域と共に歩む。それがダイハツ九州のこれからの姿です。

編集後記

チーフコンサルタント
桝永 健夫

「選ばれる会社になる」その言葉が、インタビューを通じて一本の軸として貫かれていました。ものづくりの圧倒的な強さを持ちながらも、その強さゆえに変われなかった部分に真摯に向き合い、スピード感を持って改革を進める姿が印象的でした。

タスクフォースの若手から部長クラスまで、現場の声を丁寧に拾い上げながら会社を動かしていく手法には、人への深いリスペクトが感じられます。EVという新たな挑戦と、働く人が活き活きと働ける環境づくり。その両輪がそろったとき、ダイハツ九州は次のステージへと飛躍すると確信しました。

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