子育て世代の「住宅」と「教育」を支える新たなビジネスで急成長。
GOEN株式会社
代表取締役 三浦 康司
大分県別府市出身。松山大経営学部卒業後、メーカー勤務などを経て、2009年ママさん向けの口コミサイトを運営するためGOEN株式会社を設立、代表取締役就任。14年「おうちの買い方相談室」事業をスタート。事業拡大と並行して「日本こどもの生き抜く力育成協会」「日本住宅購入診断士協会」を設立。それぞれ代表理事も務める。
住宅とFPの知識を融合した「おうちの買い方相談室」
GEON株式会社は、子育て世代をターゲットに、「住まい」と「子育て」をテーマにしたライフサポート事業を展開、大分発のサービスとして全国に展開しています。
メイン事業の「おうちの買い方相談室」では、住宅購入を検討されている子育て世代の相談者の収入や家族構成・将来のライフプランに応じて、無理なく支払える金額を算出し、提携している住宅メーカー約40社の中から予算や好みに合った数社を紹介します。相談は無料ですが、契約が成立すれば、紹介した住宅メーカーから紹介料を受け取るビジネスモデルです。
直近では、1年間に350組ほどが相談に訪れ、100組以上が住宅購入につながっています。サービスを開始した2014年当時は、住宅購入に詳しいファイナンシャルプランナーがほとんどいなかったため、「これはチャンスだ」と思いました。住宅メーカーにとっては広告費や人件費の抑制につながるし、相談者にも喜んでもらえる「WIN-WIN-WIN」のビジネスモデルなのです。
18年からは「おうちの買い方相談室」のサービスをパッケージ化し、フランチャイズ展開もスタートしました。現在、北海道から沖縄県まで60店舗に拡大、25年までに150店舗まで拡大したいと考えています。
また、教育分野にも力を入れています。4歳以上の子どもとその保護者にお金の大切さを学んでもらう「キッズマネースクール」も事業の大きな柱。もともとは住宅相談のメインターゲットである子育て世代に、「おうちの買い方相談室」を知ってもらう狙いでした。子どもにお金の大切さを学ばせたいというニーズに合致し、反響は大きかったですね。こちらも認定講師制度を事業化し、500人以上の認定講師が全国各地で「キッズマネースクール」を運営しています。
本社の近くでは「ごえん保育園」を運営するなど、一貫して子育て世代をターゲットにした事業にこだわっています。22年には東京オフィスを開設し、大分発のサービスをさらに広めていきたいと考えています。
何度もあきらめかけたその先に見つけたヒント
私が起業して最初に始めたのは、「おすすめネット大分」という、子育て世代向けの口コミサイトでした。サイトで子育て世代の人を集めて、住宅メーカーに紹介するマッチングビジネスを考えていたのですが、まったくうまくいきませんでした。
今から12年前のことですが、その頃からもうポータルサイトの時代は終わっていたんですね。PVもなかなか上がらず、広告もとれない。私はサラリーマン時代に4社経験しているのですが、生意気ながら営業としてはいい数字を挙げていたんです。ですから自信満々で起業したのですが・・・。
何度も「もうやめよう」と思ったのですが、やがて覚悟ができたんです。「つぶれるまで、やってみよう」と。そうなると不思議なもので、「どうすれば?」ということを本気で考えるようになりました。今まで見過ごしてきた色々な情報に気づくようになったんですよ。
それが私の場合は、ファイナンシャルプランニングの勉強を始めたことでした。保険代理店さんがずっと声掛けをしてくれていたのを断っていたのですが、「話を聞いてみようかな」と思ったんです。それからですね。ママさん向けのお金の勉強会を企画してみたり、おすすめネットに保険を結び付けることで、事業が少しずつ動き始めました。
「おうちの買い方相談室」は、住宅メーカーの悩みから生まれた
ブレイクスルーのきっかけは、提携していた住宅メーカーの社長さんから、ある悩みを聞いたことでした。大分だと家賃の相場は6万円。もう少しやりくりして家賃を8万円払うなら家が買える、と考えるお客さまもけっこういらっしゃいます。ところが月8万円だと、予算が2,500万円くらいなんですね。その住宅メーカーで家を建てようとすると、4,000万円くらいかかってしまう。「1,500万円もギャップがあるから、その時点で選択肢からはずれてしまう」と悩んでいました。
でもよく考えてみると、それは素人が漠然と考えている予算にすぎません。「だったら1回でいいので、そうやって離れていったお客さまを5組呼んでもらって、私にマネーセミナーをやらせてもらえませんか?」と提案したんです。「資金計画を見直し、1組でも住宅購入につながれば、保険の提案をさせてください!」と。その結果、3組が成約されたのです。
そこから、その住宅メーカーに来たお客さまの資金計画を依頼されるようになり、提携する住宅メーカーも増えていきました。ただ、住宅メーカーからお客さまを紹介されるのですから、当然自社物件の購入につながるように薦めてほしいと言われます。
ここで、葛藤が生まれたんですね。私がやりたいのは子育て世代の住宅購入支援であり、特定の住宅メーカーの販売支援ではない・・・。だったら、私たちがお客さまを集めて、紹介できるようになれば、住宅メーカーと対等な立場になれると考え、2014年2月にオープンしたのが「おうちの買い方相談室」だったのです。
学校では教えてくれない力を子どもたちに。「キッズマネースクール」
しかし、「おうちの買い方相談室」も当初は集客に苦労しました。当時はこのようなサービスはありませんでしたから、認知度を上げるために、自社のセミナールームを無料開放しました。特にママさんをターゲットにしたイベント向けに。イベントの最後に1分間だけ時間をもらい、自社のPRをさせてもらうなど、地道に集客に取り組んできました。
そのうちの企画の1つが、「キッズマネースクール」だったんです。この「キッズマネースクール」も大好評。そこで講師の認定制度を作り、講師を育成する事業も始めました。その数はすでに全国で500人を超えました。
講師を希望する皆さんにいつも伝えているのは、ビジネスは3番目だということです。まずは、日本中の子どもたちの「生き抜く力の育成」に貢献すること。この理念を遂行して欲しい、と。
お金への感謝、お金の大切さなど、お金についてのノウハウは、学校では教えてくれません。かといって、家庭でもなかなか難しいですよね。でも金融業界で働く我々なら教えることができるし、子どもたちの成長にも貢献できる。それを一番に考えて活動してほしいと伝えています。
でもこのセミナーも、たったの2時間にすぎません。であれば、私たちより長く子どもたちと一緒にいるお父さんお母さんたちにも伝えないといけないよね。ということで、保護者向けのマネーセミナーも始めました。お父さんお母さんとタッグを組んで、子どもたちの生き抜く力の育成をしていく。その先に、我々のビジネスがある。この理念を絶対にぶらさずに活動しなければならないと考えています。
思いを共有する組織は強い
でも、理念を大事にするようになったのは、6年前くらいからなんです。それまでの私は、数字重視でした。数字が上がらない社員さんがいたら、「なんでできないの?」と追及していくような人間だったんです。だから社員も定着しない。
ある時、14人いた社員が一斉に退職し、3人になってしまったんです。そうなるとさすがにへこみましたね。自分が全否定されたような感じになりましたし、売上も下がっていく一方でした。
ところが、周囲を見渡すと、我々と同じ中小零細企業なのに、優秀な人材が定着し続けている会社もあったんです。「自分の会社と何が違うのか?」と考えたときに、気がついたのが、理念の大切さでした。
会社の理念がばしっと決まっているんです。そしてその理念に賛同した人、その会社の夢を経営者と一緒に共有することができている人たちは、その会社で長く活躍している。私もそういう会社を目指さなくてはならないと思いました。
もう1つ考えたのは、1人の一歩より100人の1歩を大切にしたいということ。三本の矢の逸話と同じですよ。一本の矢はすぐに折れるけれど、三本になれば折れない。そこに共通の理念や夢が加わることで、その組織は強くなっていくんじゃないかと考えるようになったんです。
そこから採用する基準も変わりましたし、私からの伝え方も変わりました。昔は「めっちゃ稼げるよ」と言って口説いていたのですが、今はまず、「うちの会社はこういう夢を持ったベンチャーなんだ」と伝え、その夢を共有できるような人を採用するようにしています。すると、社員の定着率も劇的に変わりました。
古くからいる社員からは、「三浦さんはずいぶん変わった」と言われます。使う言葉も、接し方も変わったみたいですね。これまで辞められた方々には本当に申し訳ないなと思いますけれど、そこで大きく学ばせてもらいました。
自身も家族も誇りを持てる会社になる。
「子育て世代」をテーマにやっていこうと決めたのは、ファイナンシャルプランナーを始めて3か月ほどたった時でした。お客さまからメールをいただいたんです。「三浦さんと出会って、夫婦の人生が明るくなりました」と。
「これなんだ!」と思いましたね。子育て世代の悩みを解決するのが、私の仕事なんだと。だから今でも社員に話しているのは、子育て世代をからはずれたマーケットでは仕事をしませんと。それが私たちの戦い方でもあると思うんです。
当社の現在の夢は、大分の皆さんに喜んでいただいている「おうちの買い方相談室」と「キッズマネースクール」を全国に広めていくこと。マイホームが欲しいと思っている全国の皆さんや、全国の子育て世代のお役に立てる事業を、大分発でやっていこうと社員に呼びかけています。
それが実現すれば、少人数で、より多くの方々に影響力を与えることができ、高収益な会社の形もできるはずです。ご縁があった方々に喜んでいただいて、その対価としてお金をお預かりすることができれば、会社は繫栄する。誰もがハッピーになれます。
全国の皆さんに、「おうちの買い方相談室」「キッズマネースクール」の会社だと認知されるようになれば、家族も誇りを持てる会社になれるでしょう。そうなることで自分自身にも誇りを持てるようになる。そんな夢を共有できる人たちと仕事をしていきたいと思っています。
でも、大きな企業にすることに興味はないんです。私自身は、自分に関わってくれた人たちの顔が見える環境で仕事がしたいと思っているので。今、社内で宣言しているのは、「2026年1月に、社員40名、売上10億円の会社にする」ということ。
これからも、出会った方々とのご縁を大切に、喜んでいただける何かを提供できる会社になりたい。GOENという社名には、そんな思いも込めているんです。